掬い上げるもの

日々の中から掬い上げたさまざまな思いを綴る、俳句&エッセイ。 一話があっという間の短さです。 どこから読んでも、好きなとこだけついばんでもよし。 よろしければ、お茶やコーヒー片手に気楽にお付き合いくださいませ。 マイナスイオンを深呼吸したい方も、ぜひお立ち寄りください♪

2023-01-01から1年間の記事一覧

雲を見る時間

夏休み黙って雲を見る時間 夏休みは、夏の季語。 夏休みは、学生にとっては待ちに待った長期休暇だ。イベントも宿題も盛りだくさんの、慌ただしくも楽しさに溢れたイメージがある。 しかし、ふたを開けてみると、それなりに暇を持て余したり、ひとり黙って何…

恋する感触

人恋ふる感触今も夜店の灯 夜店は、寺社の縁日などに路傍に開く露店のこと。夏の季語。 夜店は、縁日や祭りを明るく賑わす大切な要素ともいえるだろう。 綿菓子や金魚すくい、りんご飴。たこ焼き、お好み焼き。子どものお面や素朴な玩具。 あちこちから漂う…

8分間の夏

卵茹でまた八分の夏行きぬ 俳句においては、2023年は5月6日(立夏)〜8月7日(立秋の前日)の期間が夏。8月8日の立秋以降は秋となり、秋の季語を詠む。なお、立秋は年により、8月7日の年と8日の年がある。 夏。輝く光に満ちた、一年で最も明るい季節だ。 そ…

煙草

毒の甘さ

毒のごと甘き夢去り昼寝覚 昼寝覚《ひるねざめ》は、「昼寝」の傍題。酷暑の折は疲労も激しく、睡眠不足に陥りがちなため、午睡を取ることは好ましい。夏の季語。 時々、午睡で思わぬリアルな夢を見ることがある。 どろどろと粘度の高い、身体に絡み付くよう…

ブルーハワイ

夜半の夏ブルーハワイを漂へり 夜半《よは》の夏は、「夏の夜《よ》」の傍題。暑さの去った夏の夜は、ゆったりと心地よい。しかし都市部では熱帯夜に悩まされることも。夏の季語。 酒は基本的に何でも好む。中でもカクテルは、そのレパートリーの幅広さと美…

闇に帰る光

闇となる際を見つめて揚花火 揚花火は、打ち上げ花火のこと。夏の季語。 打ち上げ花火は、夏の風物詩ともいえる心の浮き立つイベントだ。 美しく夜の闇に開く巨大な花。しかし、その音も鮮やかな輝きも、一瞬で消え去り、後には何も残らない。 こんなにスケ…

拒むきらめき

夏草のきらめきに呼ばれ拒まれ 夏草は、繁茂する夏の草。野山に茂った夏草は青々として快い。夏の季語。 ひとの心を惹き付けるきらめき。自分自身のどこかにそんなきらめきを持ちたいと、誰もが願う。 そして、誰もが既にそれぞれの魅力的なきらめきを放って…

鯨とオーロラ

オーロラも鯨も遠く扇風機 扇風機は夏の季語。 鯨とオーロラ。どちらも、私が一度は見てみたいものだ。 海に生きるほ乳類に、悲しみに近い愛情を感じるのは私だけだろうか。 例えば、動物園に出かけて一日動物達に親しんでも、帰り際に何か悲しみを感じるよ…

命の気配

目を閉ぢてさえずりの中夏あかつき 夏の暁《あかつき》。明け方は、一日で最も気温の低い時間帯。夏の明け方の空気には何とも言えない爽快感がある。夏の季語。 明け方に目覚めた。 時計を見ると、午前5時少し前。空は少しずつ明るくなり始めている。 窓から…

100%の幸せ

幸は手の中にあるものかき氷 かき氷は、「氷水《こほりみづ》」の傍題。夏の季語。 幸せとは、なんだろう。 誰もが追い続ける、難しい問題だ。そして、その解答もひとりひとりさまざまで、決してひとつにまとまるものではないだろう。 生きていると、幸せな…

願うこと

願ふこと無きに気づきて星祭 星祭《ほしまつり》は、七夕の傍題。陰暦7月7日、またはその日の行事のこと。その他に星迎《ほしむかへ》、星今宵《ほしこよい》など、七夕の傍題は多い。秋の季語。 七夕は、秋の季語だ。現在は太陽暦の7月7日に祝っているが、…

しずくの音

雨垂れの音を数えて戻り梅雨 戻り梅雨は、「梅雨」の傍題。一度梅雨が明けたように何日も暑く乾いた晴天が続いた後、再び天気がぐずつくこと。夏の季語。 梅雨明けは、どんより暗い時期を終えて輝く夏がスタートした合図として、毎年浮き立つような気分にな…

全力

生きしこと耳に残して油蟬 油蟬は、「蟬」の傍題。夏の季語。 蟬の声がだんだんと耳に入りはじめる季節は、心にも明るい力が生まれ出る。 蟬の声は夏の気配を否応なく盛り上げる。 同じ蟬でも、蜩《ひぐらし》は、早朝や夕方に、カナカナ…と、涼しくどこか悲…

酔い覚め

酔ひ覚めの記憶拾うて夏の月 夏の月は、主に涼しさを感じる月のこと。「月涼し」という傍題もある。夏の季語。 夏の宵、気心の知れた友達と飲み、話に花を咲かせた。 浮き立つようなその楽しさに、つい酒が進む。 夜も更け、ふわふわとした酔いに身を任せた…

風の肌触り

肌撫づる風のいとしき梅雨晴間 梅雨晴間は、梅雨の合間に半日や一日、または1、2時間晴れること。夏の季語。 梅雨の晴れ間。厚い雲が切れ、太陽の明るい陽射しと青空がのぞく。草木はそれを迎えるように美しい緑をさざめかせて輝く。同時に、さらさらとした…

視線

流し目に何を映して祭笛 祭笛《まつりぶえ》は、夏の季語。「祭」の傍題。 私の地元には、大きな祭がある。 20台近い数の立派な神輿が繰り出す。年齢・性別に関わらず大勢の担ぎ手が法被を纏い、手ぬぐいのねじり鉢巻にさらしという昔ながらのいなせなスタイ…

影の色

紫陽花に影てふ色の重なれり 紫陽花は、夏の季語。「てふ」は、「と言ふ」の変化したもの。 影の色、と言われたら、何色を想像するだろう。 黒、と思う人が多いかもしれない。 でも——本当に、黒だろうか。 影の色は、季節によっても違う気がする。 真夏は、…

不思議な生き物

猫の歯に羽砕かれし夏の蝶 夏の蝶は、夏に見られるアゲハチョウやクロアゲハなどの蝶のこと。夏の季語。 子猫が、アゲハチョウをおもちゃのようにいたぶって遊んでいた。 子猫に捕らえられてしまうくらいだから、そのアゲハは何らかの理由でしっかり飛べなく…

彷徨う

咲き盛る手花火の奥さまよへり 手花火とは、線香花火の別名。夏(晩夏)の季語。 線香花火は、誰もが楽しんだことのある、どこか懐かしい花火ではないだろうか。細く美しい無数の光の筋を、やわらかな花のように咲かせる。暖かいオレンジ色をしているのも魅…

どの道も

どの道も雲の峰へと続きをり 「雲の峰」は、入道雲ともいわれる積乱雲のこと。夏の季語。 湧き上がる入道雲を見上げる。 巨大で、どこまでも力強く上に向けて盛り上がる。むくむくとしたその凹凸に沿ってくっきりと影ができる。 上昇気流という自然の強大な…