掬い上げるもの

日々の中から掬い上げたさまざまな思いを綴る、俳句&エッセイ。 一話があっという間の短さです。 どこから読んでも、好きなとこだけついばんでもよし。 よろしければ、お茶やコーヒー片手に気楽にお付き合いくださいませ。 マイナスイオンを深呼吸したい方も、ぜひお立ち寄りください♪

100%の幸せ



 幸は手の中にあるものかき氷

  
 かき氷は、「氷水《こほりみづ》」の傍題。夏の季語。

 

 幸せとは、なんだろう。
 誰もが追い続ける、難しい問題だ。そして、その解答もひとりひとりさまざまで、決してひとつにまとまるものではないだろう。


 生きていると、幸せな瞬間というのがある。

 例えば——
 恋が実った。
 志望の高校や大学に合格した。
 憧れの会社に就職が決まった。
 生涯の伴侶を得た。
 愛する人との間に新しい命を授かった。
 ……その他にも、幸せな瞬間は人生の中に溢れている。こうやって書き連ねていくだけで、幸せな気持ちになる。


 でも、それは果たして、その後の確実な幸福を約束する何かなのか?
 ——そう問われると、すぐには答えられないものが心に挟まる感じがする。


 どんな幸せにも、苦みは必ずついて来る。
 恋を実らせても、その恋人と酷いケンカをすれば、食事も喉を通らないほどに思い悩むことだろう。
 学生生活も社会人生活も、結婚生活も……幸せを裏返せば、それと同じくらいの苦労や悩みがワンセットになっているはずだ。

 甘さだけで満たされる幸せというのは、きっとどこにも存在しない。
 そして、何が幸せかという質問には、やはり簡単には答えられないような気がする。

 

 そう考えると——ぎらぎらと暑い太陽の下で味わうかき氷は、混じり気のない「幸せ」だ。
 本当に些細な、何でもないことなのだが……それが幸せであることに疑問を感じる人は、おそらくひとりもいないだろう。


   炎天下のかき氷だったり、汗をかいた後のビールだったり。
 何の変哲もない日常の中にある、ちいさなちいさな喜び。
 そんなものの中にこそ、100%の幸せを味わえるひとときがある。
 ——そんな気がする。