掬い上げるもの

日々の中から掬い上げたさまざまな思いを綴る、俳句&エッセイ。 一話があっという間の短さです。 どこから読んでも、好きなとこだけついばんでもよし。 よろしければ、お茶やコーヒー片手に気楽にお付き合いくださいませ。 マイナスイオンを深呼吸したい方も、ぜひお立ち寄りください♪

風の肌触り

 
 肌撫づる風のいとしき梅雨晴間


 梅雨晴間は、梅雨の合間に半日や一日、または1、2時間晴れること。夏の季語。

 


 梅雨の晴れ間。厚い雲が切れ、太陽の明るい陽射しと青空がのぞく。草木はそれを迎えるように美しい緑をさざめかせて輝く。同時に、さらさらとした心地よい風が窓から流れ込んでくる。

 

 ——風が肌を撫ででいく感触を、目を閉じて感じる。
 何の感触に似ているだろう。

 やわらかく、なめらかで、さらりとして……どこまでも優しい。

 この肌触りに近いものは、いくら考えても思い浮かばない。
 ほかの何にも例えることのできない感触。


 でも、その風は、あっという間に通り過ぎていく。
 何のためらいもなく。 

 悲しむ間もなく、またすぐに次の新しい風が訪れる。
 そして、それも一瞬で去っていく。


 決して留まらず。それなのに、絶え間なく肌を撫でる風。

 その優しいものは、追いかけたくても叶わず、指で触れたくてもすり抜ける。
捕まえようと思えば思うほど、その空しさに悲しくなる。


 ——それでも。
 そんな身勝手な望みをすべて捨てれば、風はまた優しく私の周りに寄り添う。

 

 何も求め合わなくていい。
 ただ静かに感じているだけで、満たされる。


 風とは、なんて愛おしいものだろう。