目を閉ぢてさえずりの中夏あかつき
夏の暁《あかつき》。明け方は、一日で最も気温の低い時間帯。夏の明け方の空気には何とも言えない爽快感がある。夏の季語。
明け方に目覚めた。
時計を見ると、午前5時少し前。空は少しずつ明るくなり始めている。
窓から、ひんやりとした空気が流れ込んでくる。
日中のギラギラした黄金色とは違い、夏の早朝の陽射しの色は涼やかで、どこまでも爽やかだ。
まだ起床までには少し時間がある。
心地よく引き締まった空気を感じながら、もう一度目を閉じてみた。
——鳥の声がする。
溢れる程の、鳥たちの鳴き交わす声。
こんなにたくさんの鳥が、こんなにも囀《さえず》りを楽しむ時間があるのだ。
透き通るうぐいすの谷渡りの声。
それから——ひとつひとつの声の主は分からないが、無数に重なる囀り。
鳥たちの声に、取り巻かれる。
まるで、降り注ぐ囀りの中に佇んでいるかのように。
それは、生き物の気配が漲る時間。
人知れず存在する、楽園のようなひととき。
——新しい空気をひとつ深く吸い込んで、瞼を開けた。
夏の暁は、パワーに満ちた一日の始まりにふさわしい、動き出そうとする生命の気配に溢れている。
耳を傾ければ、清々しい大気に漲る命を感じることができる。