掬い上げるもの

日々の中から掬い上げたさまざまな思いを綴る、俳句&エッセイ。 一話があっという間の短さです。 どこから読んでも、好きなとこだけついばんでもよし。 よろしければ、お茶やコーヒー片手に気楽にお付き合いくださいませ。 マイナスイオンを深呼吸したい方も、ぜひお立ち寄りください♪

酔い覚め


 
 酔ひ覚めの記憶拾うて夏の月


 夏の月は、主に涼しさを感じる月のこと。「月涼し」という傍題もある。夏の季語。
 

 

 夏の宵、気心の知れた友達と飲み、話に花を咲かせた。

 浮き立つようなその楽しさに、つい酒が進む。

 

 夜も更け、ふわふわとした酔いに身を任せたまま、会もお開きになった。夢心地のまま歩き、気づくと自分の部屋まで到着していた。


 暗い部屋には、窓から月明かりが射している。
 照明をつけずに窓を開けた。

 

 穏やかな月の光が入ってくる。
 部屋の中の物影が、薄白く照らし出される。

 カーテンを柔らかに揺らす風。
 まろやかに優しい静寂。


 その明かりの中で、さっき仲間と夢中で話した記憶を辿る。
 酒のせいでところどころ忘れかけた言葉を、ひとつずつゆっくりと拾い上げるように。
 後悔も反省もいらない、ただ楽しい時間を振り返る幸せ。


 夏の月と友、酒。
 どれも、私にとって手放せない宝物だ。