掬い上げるもの

日々の中から掬い上げたさまざまな思いを綴る、俳句&エッセイ。 一話があっという間の短さです。 どこから読んでも、好きなとこだけついばんでもよし。 よろしければ、お茶やコーヒー片手に気楽にお付き合いくださいませ。 マイナスイオンを深呼吸したい方も、ぜひお立ち寄りください♪

拒むきらめき


 夏草のきらめきに呼ばれ拒まれ


 夏草は、繁茂する夏の草。野山に茂った夏草は青々として快い。夏の季語。

 

 ひとの心を惹き付けるきらめき。自分自身のどこかにそんなきらめきを持ちたいと、誰もが願う。
 そして、誰もが既にそれぞれの魅力的なきらめきを放っている。
 しかし、そのことに自分ではなかなか気づかない。


 自分は、どんなきらめきを放っているだろう?
 それはちゃんと、自分の思い通りの色をしているだろうか?
 時々、そんなことを思う。

 


 ——夏草の生い茂る野原を通りかかった。
 夏の熱い風に吹かれ、剣のように美しい葉のつややかな表面が一斉になびく。
 それは強い陽射しに反射し、ギラギラと鋭い波のような輝きを放つ。

 ざざ……っと、風の通った跡が爽やかな音を立てる。
 一切無駄のない、鋭く力強い美しさ。


 その輝きに、思わず歩み寄った。
 しかし——腰辺りまで高く密集したその草の太い茎に阻まれ、その中へ足を踏み入れることができない。
目の前で、こんなにも美しく波打っているのに——その輝きの中に立ってみたいという願いは、すげなく跳ね返された。


 青々と輝き、人を惹き付けて止まない夏草。
 しかし、惹き付けておきながら、その茂みは近づく者を拒む。簡単に踏み込むことのできない強い茎と、鋭い葉先をなびかせて。

 

 夏草の野は清々しくきらめくが、どこか険しく、寂しい。
 優しい表情を見せない——それこそが、夏草の魅力なのかもしれないが。