日も熱も風に吹かれて秋立てり
「秋立つ」は、「立秋」の傍題。2023年の立秋は8月8日。これ以降は俳句の上での季節は秋になり、秋の季語を詠む。
夏が太陽の季節ならば、秋は風の季節という気がする。
秋の気配は、風が連れて来る。
地上はまだまだ暑いのに、遥か上空ではもう風の音がする。
この風は、夏が終わりに近づくにつれて上空から少しずつ降りて来て、気づかぬうちに私たちをすっかり包んでしまう。
どんなに夏を引き止めたくても、この風の訪れは無情で——そして、爽やかに優しく私たちを包む。
ぎらぎらとした太陽も、その陽射しに熱せられた空気も——そんな涼やかな風に吹かれて、少しずつ揺らぎを見せ始める。
ちょっと強く風が吹けば、陽射しも熱もさらっと吹き流されてしまうような——そんな儚さを漂わせるようになる。
夏の終わりは、どうしようもなく寂しく、切ない。
それでも——新しい秋の風は、去ってしまった輝く季節を惜しむその切なさを、静かに癒してくれる。
過ぎた夏を懐かしく振り返る心に変えてくれる。
夏も盛りを過ぎ、風が熱をしのぐ気配が僅かずつ漂い始める。
そんな、心のどこかがふっと切なくなる一瞬を詠んだ句だ。